EMILY KAME KNGWARREYE
(エマリー カーメ ングウォリー)


オーストラリア・アボリジナルアート界で、彼女の存在を知らない人はいません。

1988年にバティック(ろうけつ染め)からスタートし1996年9月に他界するまで実に3000点もの作品を制作したといわれています。 推定年齢86歳 20代後半まで白人と接触した事がなく、もちろん文明社会で生活する事も無く生涯を中央砂漠のブッシュで過ごしたアボリジニの女性です。

アリススプリングより北東240キロのユートピアというコミュニティで生まれ1988年〜1996年までのわずか8年という短い“アーティスト生活"で瞬く間に大スター的存在となりました。 実際に今年1月にオーストリアが選んだトップ12のアーティストのうち彼女は堂々見事1位に輝いたのです。 そんな彼女をドキュメンタリーで番組を製作したいとの撮影依頼が96年3月にNHK教育テレビよりあり、私はコーディネーターとして4日間エマリーを密着取材するという絶好の機会に恵まれたのでした。 平均気温が40℃以上であるオーストラリア中央砂漠での撮影は想像以上に過酷で厳しくすぐさま木陰でズル休みをしたがる私とはうらはらに、とても86歳とは思えぬエマリーのされはそれはエネルギッシュでパワー溢れる筆づかいを目の前にして私は“身体中の毛穴が開く"という生まれて初めての感覚をそこで覚えたのでした。 大きなキャンバスのど真中にチョコンとあぐらをかいて座るエマリー。筆を握ったらもう止まることなく右から左へと次々に色を重ねてものの見事にあっという間に作品を完成。 タバコの葉を奥歯でクチャクチャ噛み締めて上目づかいにニヤリと笑った彼女のたまらない笑顔がとても印象的でした。今までも忘れる事はありません。 彼女の作品は今や世界中のメジャーな美術館で展示されています。近い将来日本でも必ず彼女の作品をご覧いただける日が来るはずです。 楽しみにお待ち下さい。